唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

京都弁を使う新米女刑事と、東京からやって来た管理官がコンビを組み、時効寸前の殺人事件に挑む…。鏑木蓮さんの「時限」を読む。

 

時限 (講談社文庫)

時限 (講談社文庫)

 

 

 

京ことばは、粋な雰囲気を醸し出すという好意的見方があるが、

人を持ち上げながら見下げる、冷たい、など、否定的な

意見もある。

 

この作品は、京ことば満載である。

 

主人公である、新米女刑事、片岡真子はもちろん、

警察庁から来た異色の管理官以外、みんな。

京都弁が飛び交う。

 

犯罪小説や、犯人を追い詰める警察モノなど、

緊迫した場面が多い物語には、空気が違うというか、

緊張を削ぐというか…。

 

だが、読み進めていくうち、

それほど気にならなくなった。

なじんだのかも。

 

というか、京都弁だろうと、群馬弁であろうと、

博多弁であろうと、気にならなくなるほどの

ストーリー展開、引き込まれた。

 

一つひとつ、事実を確認し、そして前へ進む。

典型的な警察モノである。

犯人の足跡をたどる捜査員の足跡を、読み手がコツコツと

辿っていく。

 

事実を積み上げていく作業は地味だが、

その過程が心地よい。

必ず犯人のもとにたどり着くと信頼して

読んでいける。

 

また、片岡を取り巻く刑事たちや

鑑識課員が、片岡に対し優しい。

 

刑事部屋内に変な摩擦や軋轢がないところも、

余計な気力を使わず、うれしい。

周囲の温かい目に見守られ、刑事として学んでいく、

これは、片岡真子の成長物語でもある。

 

女性の縊死事件が、時効寸前の殺人事件へと繋がっていく。

 

時効を阻止できるのか、

「悪い奴を許すな」、その怒りが、片岡の原動力だ。