曽根圭介さんの「本ボシ」を読む。
静岡県警富士署の新米刑事、一杉研志が物語を引っ張っていくのだが、
キャラがあいまいで、特長がみえてこない。
いい奴なのか、ヘタレなのか、
なんだか、ぼんやりしていて気持ちが寄り添っていかない。
登場してくる他の幾人もの刑事、アパートの大家、
人権派弁護士、元刑事、読み続けているうちに、
誰も彼もが気味悪くなってくる。
黒く濁った部分を内に抱え、それが匂ってきそうな。
だが、それは人間らしさなのかもしれない。
一杉が、犯罪被害者家族の一人だということがはっきりすると、
その苦しみ、やるせなさが、一杉の輪郭をくっきりとさせる。
性犯罪、警察の隠蔽、冤罪、贖罪といった、
気の滅入るテーマが揃うが、
それでも、物語の力に結末までグイグイ引っ張られる。
そして、そのラストだが…。
突然、置き去りにされた気分だ。
あまりにも突然すぎて、周りをキョロキョロ見回しそうになった。
この結末は…。
幼女の全裸死体が発見され、一杉は初めて捜査本部に入る。
これまでの何件もの事件で名前が挙がった男が、
目撃情報などにより容疑者として特定される。
そして、取り調べでついに自供を引き出す。
事件は解決したかに見えたが、二年後、類似した
幼女殺害事件が発生する。
その二件を含め幼女殺害は五件起こっており、
一人の真犯人の連続殺人だと主張する元刑事。
一杉たちがあげた容疑者は犯人ではないのか。
「本ボシ」は本当にいるのか…。