雨の中、小五の少女が姿を消す。その日から、県警刑事の長い戦いが始まった…。吉川英梨さんの「雨に消えた向日葵」を読む。
この作家さんの作品は、軽めのミステリーや警察小説を読んできたが、
この作品のように、重くて、厚みのある物語もいい。
命を狙われる逃亡劇もない、
ジェットコースターのような急展開があるわけでもない。
地味な捜査員たちの地道な捜査が丹念に描かれる。
二年以上にわたる、地べたを這いずり回るような捜査。
鬼気迫る捜査活動が生々しく、
逃亡劇や追跡劇よりも、ヒリヒリした。
埼玉県で、ゲリラ豪雨の中、小五の少女、葵が学校帰りに忽然と姿を消した。
後には、傘が一本だけ。
事故か、事件か。
一カ月前ほど、葵が不審な男に付きまとわれていたという、
姉の証言から、県警捜査一課の奈良ら、捜査員が出動する。
だが…。
約三年がたち、
捜査本部はすでに解散し、世間も忘れかけてはいたが、
関わった捜査員、被害者家族はあきらめていなかった。
そして、奇跡は起こる。
あきらめなかった人々がたどり着く結末は、感動的ですらある。
中心人物である奈良もまた、ある事件の被害者家族だと知らされるが、
最後の場面は胸に迫り、不覚にも、涙がにじんだ。
埼玉県警捜査一課の、別の物語、読みたいなぁ。