唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

雨の中、小五の少女が姿を消す。その日から、県警刑事の長い戦いが始まった…。吉川英梨さんの「雨に消えた向日葵」を読む。

 

雨に消えた向日葵 (幻冬舎単行本)

雨に消えた向日葵 (幻冬舎単行本)

  • 作者:吉川英梨
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: Kindle版
 

 

 

この作家さんの作品は、軽めのミステリーや警察小説を読んできたが、

この作品のように、重くて、厚みのある物語もいい。

 

命を狙われる逃亡劇もない、

ジェットコースターのような急展開があるわけでもない。

地味な捜査員たちの地道な捜査が丹念に描かれる。

 

二年以上にわたる、地べたを這いずり回るような捜査。

鬼気迫る捜査活動が生々しく、

逃亡劇や追跡劇よりも、ヒリヒリした。

 

埼玉県で、ゲリラ豪雨の中、小五の少女、葵が学校帰りに忽然と姿を消した。

後には、傘が一本だけ。

 

事故か、事件か。

 

一カ月前ほど、葵が不審な男に付きまとわれていたという、

姉の証言から、県警捜査一課の奈良ら、捜査員が出動する。

 

だが…。

 

約三年がたち、

捜査本部はすでに解散し、世間も忘れかけてはいたが、

関わった捜査員、被害者家族はあきらめていなかった。

そして、奇跡は起こる。

 

あきらめなかった人々がたどり着く結末は、感動的ですらある。

 

中心人物である奈良もまた、ある事件の被害者家族だと知らされるが、

最後の場面は胸に迫り、不覚にも、涙がにじんだ。

 

埼玉県警捜査一課の、別の物語、読みたいなぁ。