世界の旅に出られない今、各国のスイーツを堪能、ついでにホンワカ気分も味わって…。近藤史恵さんの「ときどき旅に出るカフェ」を読む。
コージーミステリーというジャンルに入るのだろうが、
もっと軽めな感じ。
なにしろ、十編も収録されていて、すごく得した気分になる。
この作家さんの作品、「ビストロ・パ・マル」シリーズと
似たようなテイストだ。
読んで決して嫌な気分にはならない、それどころか、
ふんわりとした空気に包まれ、心が満ち足りたような感じ。
安心して、お勧めできる作品の一つだろう。
足を踏み入れたことのない店に入るには勇気がいる。
エイヤッと入って、その店で、
自宅のリビングにいるかのような落ち着きが得られるとしたら、
どんなに素敵なことだろう。
そういう店にはなかなか出会えないし、
行きつけの店さえない。
このお話は、三十代後半の独身、仕事に生きているわけでもない、
一人でいることに慣れてしまった瑛子が、
自宅近所にカフェを見つけ、そこに足を踏み入れたところから始まる。
そのカフェは、職場の元後輩、円が経営する店だった…。
その店、「カフェ・ルーズ」では、
世界の珍しいスイーツやドリンクを手作りで供している。
瑛子は、円から聞く、海外のスイーツの話、そして店の
居心地の良さに魅せられて、いつしか、常連に…。
客が持ち込むさまざまなトラブル、男女のもつれや、
人間関係のゆがみ、そうしたものが、
いつの間にか、するするとほどけていく…。
円の柔軟な生き方や考え方が眩しい感じであり、
同時に、瑛子の脇役的だが、落ち着いた雰囲気が好ましい。
できれば、続編を、お願いします。