カメラマン兼探偵の辰巳が、愛車のワーゲンバスで日本をさすらう…。寄り道した街で事件に遭遇し…。香納諒一さんの「見知らぬ町で さすらいのキャンパー探偵」を読む。
「さすらいのキャンパー探偵」シリーズの
三冊目だそうだ。
ジャンルとしては、どうだろう、探偵モノで、
ハードボイルドに入るのだろうか。
だが、ゴリゴリのハードボイルドのように、
乾いた雰囲気ではない。
むしろ、ロマンチック、あるいはセンチメンタルな感じだ。
「蒼ざめた眠り」に登場したカメラマン兼探偵の辰巳翔一だが、
いつの間にか、「さすらいのキャンパー」になっていた。
愛車のワーゲンバスを駆って、日本のあちこちを旅する
探偵の物語に変化していた。
「蒼ざめた眠り」の辰巳とは、どことなく、雰囲気が違っていたが、
このシリーズの辰巳の方が、好きかもしれない。
寄り道した街で出会った人々のちょっとしたトラブル、
たまには、殺人事件に遭遇、巻き込まれる形、
でも、脇役的立ち位置で、真相へと導く。
重く、昏い感じはなく、人の感情の行き違いといったものが、
海辺に沈む夕日の情景をまじえて、情緒豊かに描かれている。
かまえて読まなくてもいい、ちょっと、ウェットな
ハードボイルドである。