若竹七海さんの「さよならの手口」を読む。
探偵を休業し、ミステリ小説専門の古本屋でバイト中の葉村は、
古本を引き取りに民家を訪れる。
押し入れにあった本を物色しようと体を突っ込んだとたん、
床を踏み抜き転がり落ちる。
転がり落ちた先には、なんと、白骨遺体があった。
白骨に頭突き、なんていう経験は、葉村以外、
なかなかできるものじゃないのだろう。
「不運な探偵」というキャッチフレーズ(?)を
付けられた葉村の面目躍如といったところか。
ともかく、そのケガで病院に運び込まれるのだが、
同室の、往年の大女優から、失踪した娘の行方を
探してほしいと頼まれる。
この依頼を受けた瞬間から、数々のトラブル、
厄介ごとが葉村に襲い掛かるのだ。
で、今回は、まあ、ケガのオンパレード。
白骨への頭突きに始まり、
男に首を絞められた拍子に床に倒れ
顔面負傷。
そして、病院での大立ち回りで、
看護師の頭突きを胸に受けたり…。
相変わらず、調査で浮かび上がってくる人の悪意や
ハードな事実が、乾いた文体とシニカルな葉村の
毒づきで淡々と語られる。
そうした悪意や悲しみが澱のようにたまってくる。
真正面から向き合う探偵は、よほどタフでなければ務まらない。
ある作家が探偵に言わせた言葉を思い出す。
「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」。
優しさとは強さ、強さとは優しさだと、この時思った。