大沢在昌さんの「北の狩人」を読む。
北の国から新宿に一人の男がやってきた。
彼は、十年以上も前につぶれた暴力団、「田代組」のことを
聞きまわっている。
その男が動き回るにつれ、新宿の闇社会にさざ波が立ち、
やがて大きなうねりとなって、男たちを巻き込んでいく。
「狩人」シリーズの第1弾。2作目から先に読んでしまったのだが、
シリーズとは言っても、独立した物語で、
違和感はない。
「汚れのない瞳」を持つ北から来た男、梶雪人は
方言丸出しのしゃべりで、朴訥で爽やかこの上なく、
闇社会の男たちとは対象的に描かれている。
そして、彼と触れ合った男たちは誰もが、
梶の魅力にひきつけられるのだ。
新宿署の佐江も例外ではない。
始めは、無防備に嗅ぎまわる梶に
うさん臭さを感じるのだが、
その正体を知り、梶の人柄に触れたとたん、
肩入れしてしまう。
って、佐江は、「砂の狩人」にも登場するから、
「狩人」シリーズをつなぐキーマンは佐江なのか。
そして、もちろん梶は魅力的なのだが、
「本藤組」の宮本の生き様が、
「砂の狩人」の西野と重なり、切ない。