唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

若竹七海さんの「錆びた滑車」を読む。

<葉村晶>シリーズ、待望の新刊。日本一不運で、同じくらいタフな女探偵の物語。さて、今回は、どんな不運に見舞われるのか…。

 

で、やはり、のっけから不運をひっかぶり、

ああ、いつもの葉村シリーズだと、妙に安心してしまった。

ホント、裏切られない。


これまでは、冷笑を浮かべ、皮肉たっぷりの目で

周囲を見ていた葉村だが、最近少々、変化してはいませんか。


なんだか、ここのところ、体もメンタルも弱ってきていそうな。

それに、愚痴も多くなっている。

タフな女探偵も、もう、四十過ぎ。

仕方ないとはいえ、とんがったところだけは、

失ってほしくない。


それに、この作品でも感じたのだが、

葉村は結局のところ、かなりのお人好し。

彼女の周りには、常に、人の都合などお構いなしの人間が

登場してくるのだが、

彼らに心の中で毒づきながらも、ムチャぶりでもなんでも、

つい、手を貸してしまう。


さらに、前々作と同様、今回も登場した当麻警部にも

いいように動かされている感あり。

 

さて、葉村は、石和梅子という老女の尾行という下請け仕事を、

付き合いのある「東都総合リサーチ」社から受けた。

梅子が訪問したアパートで張り込んでいたところ、

突然、彼女と、訪問した相手、青沼ミツエがアパートの

階段から転がり落ちてくる。


葉村は、その二人に巻き込まれ、ケガを負ってしまうのだ。


ミツエとの妙な縁がきかっけで、

彼女の孫、ヒロトとも知り合う。


八カ月前、ヒロトは父親と一緒に交通事故にあい、

父親は死亡、ヒロトは重傷を負った。

さらに、事故の前後の記憶をなくしている。


そんなヒロトから、父親と自分が事故現場にいた

訳を調べてほしいと頼まれる。


調査を進めるうち、大麻、鎮痛剤の横流し、密売といった

事実が浮かび上がり、事件は複雑化していく。


そして、ミツエとヒロトが住むアパートから火が出て、

二人は…。


葉村シリーズの登場人物たちは、富山店長を始めとし、

いずれも、一癖も二癖もあるしたたかな人間で、個性的といえば、

そうなのだろう。


あまりにもキャラ立ちし、葉村がかすんでしまいそうだ。


それにしても、葉村晶という女性は、

活字を追っていると、圧倒的存在感で迫ってくるのだが、

どういうわけか、うまくイメージできない。


実写化されたら、ふさわしい女優は誰だろうと、

想像してはみるのだけれど…。

 

 

錆びた滑車 葉村晶シリーズ (文春文庫)

錆びた滑車 葉村晶シリーズ (文春文庫)