内藤了さんの「憑き御寮 よろず建物因縁帳」を読む。
あの世とこの世の間(マ)で命を張る、仙龍、春菜、コーイチ、和尚、教授。再び登場!
今回の悪しき因縁は、おぞましき女の執念。
また、春奈の天敵、長坂が余計なことをしてくれるのだが、
近頃は、春菜も決して負けてはいない。
長坂がやり込められる場面は、スッとする。
人の執着というものは、実に凄まじいものだと、
震えがくる。
生、性、物、色…ネバつくような欲が執着へと
変わるとき、その想いはその場にべたっとはりつく。
幸せなことに、怨念に変わるほどの執着を持ったことも、
出会ったこともない。
はるか昔、人が平気で虐げられる社会では、
人の黒い瘴気は、簡単に怨念を呼ぶのかもしれない。
だが、 陰温羅流の因縁切りの儀式は、圧倒的な力で迫ってくる。
そして、厳かだ。
「生者の命と死者の魂が邂逅」するその場は、相手が怨霊とはいえ、
とてつもなく、切なく、悲しい。
そして、今回、初めて、サニワとしての春菜の活躍を見ることができた。
あっぱれ、春菜!
春菜と仙龍との関係も進みそうな予感で、
ますます目が離せない。
博物館となっているかつての豪商、藤沢家の屋敷で
展示を開催するため、改修工事を行うことになった。
高沢春菜が勤めるアーキテクツは、展示プロジェクトを
担当するが、その藤沢家では職人が立て続けに変死をとげた。
どちらも、帯締めや振袖を首に巻き付けていたという。
そしてその顔は笑っているかのようだった…。