唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

内藤了さんの「魍魎桜 よろず建物因縁帳」を読む。

 

魍魎桜 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

魍魎桜 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

 

 

このシリーズが始まった時の春菜は、

ただただ、鼻っ柱の強い、独りよがりの女という感じだったが、

まっすぐで、一途な女の子へと、そのイメージは変わっていった。

 

 そして、徐々に、仙龍への思いが溢れてきて、

かわいらしい。

 

 今作まで来て、サニワの意味、存在意義というものを真剣に

考え始めている。

 

 

 

桜は昔から、数多くの作品に取り上げられ、

描写されてきた。

 

その華麗な姿は、あまりにも華麗であるがゆえに、

この世のものではないものとの関わりがイメージされる。

そして、時には「死」とも結びつく。

 

だが、それはあくまでも、人の勝手な思い込みで、

桜は桜でしかなく、完璧な美しさを誇り、そして

瞬く間に、この世から消え去っていく。

 

今回、隠温羅流の職人たちが曳くのは、

樹齢八百年の魂呼び桜である。

 

改めて思うが、最後の儀式に臨む職人たちは、

実に格好が良い。だが、それは、この世とあの世の境に居て、

悪縁を断ち切るために命を懸ける男たちだからである。

 

そして、魂呼び桜を曳く場面は、感動的だ…。

 

 

猿沢地区の地滑り跡から、漆喰の繭状のものに包まれた

男性の人骨が発見された。

それは、はるかはるかの昔。

この地で人柱となった旅の僧のものだと推測された。

 

民俗学的見地から、小林教授がその遺骨に関わっていく。

 

そのころ、同地区では老婆の死霊が相次いで目撃され、

その死霊に出会ったものは体の不調を訴える、

あるいは命を落としてしまう。

 

悪しき縁は断ち切れるのか。

 

春菜、仙龍、コーイチ、雷助和尚、小林教授、

いつもの面々が顔をそろえる…。