内藤了さんの「サークル 猟奇犯罪捜査斑・厚田巌夫」を読む。
凄惨な現場に臨場する厚田刑事。
そして、彼と夫婦となった石上妙子の若き日の物語である。
警察官一家、夫婦と子供二人が刺殺されたあげく、
全員の心臓がくりぬかれる。
放射状に並べられた遺体の頭の上にそれぞれの心臓を置くという
通称、「魔法円殺人事件」。
この事件は未解決のまま、<藤堂比奈子シリーズ>の
「Copy」へと繋がっていく。
だが、この作品の核は事件ではもちろんなく、
検視官石上妙子と厚田がいかにして夫婦になったか、
彼女のお腹に宿った子どもの行く末、
そして、いかにして夫婦でなくなったのか、
二人の、夫婦や仲間というより、人間としての絆が描かれる。
二人を結びつけるものは、
夫婦愛などではなく、「敵を取ってくれと
訴える被害者」なのだと、厚田は思う。
夫婦であろうがなかろうが、
この二人以上に強く結びついている男女はないだろうし、
それは、うらやましいことでもある。