唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

内藤了さんの「AID 猟奇犯罪捜査斑・藤堂比奈子」を読む。

「進め、比奈ちゃん!アンタは刑事よ」。凄まじい悪意の残骸。命を冒瀆する猟奇犯罪者に、比奈子は母の形見の七味缶を握りしめ立ち向かう。その背中を守るのは、熱い心をたぎらせた仲間たちだ。

 

現在、ワタシのツボにガッツリはまったシリーズ作品である。

 

この作品は、「ON」「CUT」と続く「猟奇犯罪班・藤堂比奈子」シリーズの3作目。

 

藤堂比奈子との出会いは、TVドラマが先だった。


原作を読んで、ドラマでは比奈子のキャラに
かなり手が加えられていたことに驚いた。

 

原作の比奈子は、凄惨な現場写真から目をそらし、
犯人に怒りをたぎらせ、親友の死に号泣する。
実に生き生きと走り回るのだ。

 

猟奇犯罪班のボス、ガンさんこと厚田警部補、東海林、倉田、
清水、片岡、三木鑑識捜査官といった仲間。


そして、死神女史と異名をとる検視官、石上妙子。


この個性ハンパないメンバーから目が離せない。

 

今回、彼らが追うのは「自殺」。


車の中で腐敗した挙句、爆発した自殺体。
首吊り後、腐り、首が落ちてしまった遺体。


自殺と処理された事案を猟奇犯罪班が追う中、
ネットの自殺防止サイトが浮かび上がってくる。

 

比奈子がこの事案で心を寄せるのは、死に囚われた人々。


彼らのまき散らす負のオーラを浴びながら、
「それでも生きて!」と叫ぶ。


街の真ん中で、自殺志願者の女性にしがみつき、
「この人死ぬって!そんなのダメ!誰か助けて!」と、
刑事らしからぬ叫びを発する。

 

原作では、これほどまでに熱い刑事として描かれている。

 

くじけそうになる比奈子に対し、
楽に死ねる自殺なんてない。

「眠るように死にたかったら、天寿をまっとうするしか
ないんだよ…生々しい命を無理に終わらそうと思ったら、
楽になんか死ねるわけがないよ」という
死神女史の言葉が深くしみこんでいく。

 

このシリーズは、最新作「COPY」まですでに9作出ている。


どこから読んでも、それなりに楽しめるが、
登場人物の関係性や物語の展開を理解するため、
やはり順番通りに読んだほうがより楽しめるはず。

 

シリーズを追うごとに比奈子は刑事らしくなる。

 

これはある意味、藤堂比奈子の成長物語なのかもしれない。

 

 

AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)