長岡弘樹さんの「赤い刻印」を読む。
人間の繊細な心の動き、哀しみ、憂い、
怒り、驚き、怯えが細やかに描き出されている。
この作家さんの短編には、いつも、唸らされる。
いつのまにか、思いがけない結末に導かれ、
それでも、違和感はなく、納得してしまう。
「傍聞き」に登場した母娘が再び登場する
表題作の「赤い刻印」ほか、3編。
中学三年の菜月は、刑事である母、啓子から、
自分には二人の母親がおり、実母はまだ生きているのだと
聞かされる。
そんな母のもとには、毎年春、お守りが届く。
送り主はわからない。
そして、物語は、ある事件への結末へと繋がっていく…。
(「赤い刻印」)
主人公の女子医大生が記憶障害に陥る。
医師になる道は閉ざされた。
だが、物語は淡々と続く。
一日一日、記憶をなくしていく彼女に
医師は日記を書くよう指示するが…。
(「秘薬」)
小さな謎が解き明かされる時、
心が動かされることに気づく。