「サトウミサキ」、その女の正体は…。伊岡瞬さんの「本性」を読む。
復讐をテーマにした物語は多い。
だが、スカッとした結末にたどり着くものは少ない。
結局、復讐というものは、自己満足に行きついてしまうからだろうか。
死者のために仇を討つ、とか言っても、死者の望みなんて、
分かるわけがない。
死に際に、「この無念をはらしてくれ~」とか
頼まれれば、別だろうが。
この作品は、「サトウミサキ」と名乗って
人の心を引っ掻き回す謎の女をめぐり、
四人の男女と、二人の刑事の視点で物語が展開していく。
ある男は貢がされ、別の男は心を惑わされ、
女は脅かされる。
彼らはジワジワと崩壊していく。
この四人と「サトウミサキ」との出来事が、
男性焼死事件と結びついていき、
散在する事柄が、徐々に集束していくのだ。
登場人物はいずれも、その行状がクズに近く、
「サトウミサキ」にも、心が添っていかない。
色と欲にまみれた四人が「サトウミサキ」と関わり、崩壊していく様は、
読んでいるこちらにも、黒い悪意のようなものが
伝わってきて、放り出しそうになった。
後半、刑事二人の視点になり、謎が徐々に解き明かされていくにつれ、
引き込まれていく。
だが…、最後の一人の関係者が…。
結末は、案の定…だった。
人の本性って、見なければ見ないでも…。