唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

安泰な生活を望み、警察行政職員を目指した女が刑事に…。山邑圭さんの「刑事に向かない女」を読む。

 

刑事に向かない女 (角川文庫)

刑事に向かない女 (角川文庫)

 

 

 

クセの強すぎるオッサン刑事や、相性の悪い同僚と組まされ、

前半は、常に毒づいている気がする。

 

挙句に、マスコミへの情報漏洩を疑われ、捜査から外される始末。

 

主人公、椎名真帆は、「楽な」生活を望み、警察行政職員を目指していたが、

間違って警察官の試験を受け、合格。

交通課で成績を上げ、あれよあれよという間に刑事になってしまった。

なりたかったわけでもないのに…。

 

「無理せずに生きる」が信条の、どこにでもいそうな普通の女子が、

無理しなきゃやっていけない刑事になった。

やる気もなさそうで、「いつでも辞めてやる。もともと、

向いてはいなかった」とグチり、「じゃ、辞めちまえ」と、

こっちも毒づきたくなる前半だったが。

 

女性の刺殺事件の捜査に参加し、孤独な被害者に向き合い、

情報漏洩の疑いで外されることになると、

「このままで終わるのは嫌だ。終わってなるか」と奥歯をかみしめる。

 

単独の捜査で聞き込みにいくと、「刑事らしくない」とか言われ、

情報を提供してもらえる。

一人で事件に向かう姿勢は「タフ」な刑事そのもので、

「刑事に向いている女」と言ってもいい。

 

真帆を悩ます悪夢、捜査から外された本当の理由、

失くしてしまった八歳以前の記憶…

一つ一つナゾが解き明かされ、事件の核に近づいていく。

 

結末は、胸に温かく迫ってきた。