香納諒一さんの「幸」を読む。
所轄、海坂署に誕生した、少々風変わりなコンビ。
中年刑事、寺沢の新しい相棒となったのは、
本店捜一から異動してきた一ノ瀬明子。
彼女は、シングルマザーにならんとする
妊娠八か月の妊婦だった。
これまでにない刑事コンビの誕生に、
期待感が膨らむ。
妊婦である女刑事とのコンビで、
何か、とんでもない犯人追跡が
見られるのかと思ったが、
謎を解き明かし、
コツコツと真実を追求していく姿は、
これまでの警察モノとそれほど
違いはなかった。
だが、そんなことはどうでもよくなるほど、
徐々に二人の息があってくる。
寺沢にも、一ノ瀬にも、
警察組織との軋轢という同じような過去があった。
刑事であることにこだわり、
どんな状況でも刑事であろうとする寺沢と、
寺沢の想いをくみ取ろうとする一ノ瀬。
妊婦であろうとなかろうと、
最強のコンビになることは間違いない。
寺沢と一ノ瀬は、認知症の老婆を保護する。
彼女がいたのは、開発計画で解体工事が決まっている
店の勝手口だった。
さらに、解体中の別の店舗跡地、から白骨遺体がみつかる。
その遺体は、三十年以上が経過しているという。
その店舗では、二十年前ごろから七年間住んでいた女が
三年前、昔の夫を殺害して捕まり、殺人犯として
服役していた。
そして、保護された老婆には虐待されている可能性があった。
バラバラな謎が少しずつ、少しずつ、集束していく。