唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

佐々木譲さんの「代官山コールドケース」を読む。

地道な捜査。事実を一つ一つ確かめ積み上げる。そうやって、犯人の後ろ姿を追う。未解決事件を扱う、二人だけの特命対策室。骨太で重厚な、ザ・警察小説だ。

 

正統派の警察小説である。

 

川崎で女性が強姦されたうえ扼殺されるという事件が発生する。

現場からDNAが検出されたが、それは十七年前代官山で起こった

女店員殺人事件現場で見つかったものだという。

 

代官山の事件では容疑者が浮かんだが、逮捕前に死亡。

自殺として処理された、いわば、終わった事件だった。

 

十七年前の事件は冤罪だったのか。

警視庁の大失態を最小限にするには、

神奈川県警より早く犯人を見つけ出さなければならない。

特命対策室の水戸部、そして助っ人として

朝香千津子が呼ばれた。

 

終わった事件であることから、

極秘の再捜査という難題が課せられる。

 

 

この作品の雰囲気は、ニュートラルだ。

色でいえばモノトーン。

 

そこには余計なものがない。

個性的な天才肌の刑事や、腕っぷしの強い刑事の

アクションシーンもない。

 

だからこそ、無駄に感情を引きずられることもない。

 

警視庁の刑事、科捜研、そして所轄の刑事が

それぞれの角度から、闇に沈んだ真実を掘り起こしていく。

散らばっていたものが真相に向かって集束していく。

 

それが肌で感じられ、ゾクゾクしてくる。

 

捜査の一歩一歩が、淡々と描写される。

だが、その淡々とした描写により、ヒタヒタと犯人の後ろ姿に迫ってゆく

刑事たちの足音が聞こえるかのようだ。

 

結末に近くなると、心拍数が上がる。

 

淡々とした作品で色、そして激情があるとすれば、

結末における相棒の朝香。

 

優秀な捜査員の顔を崩さなかった朝香だが、

容疑者に向かってブチ切れる。

「性犯罪者のことをなんて言ってるか知ってる?

頭の中まで海綿体の猿野郎って言うんだよ」と。

 

このセリフ、スカッとした。

 

で、この事件、なんと、四十時間で解決したことになる。

中味が濃密すぎて、時間の経過など意識のうちになかった。

 

代官山コールドケース (文春文庫)

代官山コールドケース (文春文庫)