小路幸也さんの「コーヒー・ブルース」を読む。
舞台は1991年の北千住。喫茶店「弓島珈琲」に人が集う。誰しもが仲間になれそうな、温かな空気が流れる。事件は起こるのだが、読み終えた後の爽やかさは「東京バンドワゴン」につながるものがある。
主人公の弓島大(ダイ)は、「弓島珈琲」のマスター。
祖父母が住んでいた洋館を改築し、喫茶店にした。
ダイと、そして母親の親友、丹下さんと二人で
店を切り盛りしている。
五年前、同じ広告会社に勤務していた恋人を薬物がらみで失い、
おまけに事件の容疑者の疑いをかけられるという過去を持つ。
ある日、近所の小学生の女の子から中学生の姉の行方を
捜してほしいと頼まれる。
娘の行方をひたすら隠す両親には、なにか事情がありそうだ。
そして、ダイが巻き込まれた事件が、
五年ぶりに姿を現す。
小路幸也さんの作品は登場人物が多く、
それぞれ、家族、あるいは家族に似た濃密な関係を持っている。
誰かが見守り、誰かに見守られ、
そういった人との何気ない言葉や感情のやり取り、
普通であることの大切さ、そんなものが
ギュッとつまっている。
どの作品を読んでも、人は一人では生きられない、
誰かとつながって、一人で生きなくていいんだよという言葉が
聞こえてきそうな気がする。
コーヒーブルース Coffee blues (実業之日本社文庫)
- 作者: 小路幸也
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2015/01/31
- メディア: 文庫
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