唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

内藤了さんの「ゴールデンブラッド」を読む。

どんな血液型の患者にも輸血可能な「ゴールデン・ブラッド」。これをもとに製薬会社と大学病院が人工血液を開発した。だが、輸血を受けた人が次々に変死する。この人工血液は「奇跡の血液」か「悪魔の血液」なのか。

 

マラソン会場での爆破、輸血用血液不足、血友病、人工血液など、
話題が満載の作品。

 

相変わらずのスピード感あるストーリー展開で、
一気読みしてしまった。

 

東京五輪プレマラソンの会場で自爆テロが発生。
多数の死傷者が出た。

 

当日、後方支援で会場にいた消防隊員の向井圭吾は、
地獄のような現場で、被害者救出に全力を注ぐ。

 

一方、圭吾はまさに同じ日に妹の惠利を心筋梗塞で失った。

 

その後、爆破で負傷し、輸血を受けた人が同じような
症状を併発し死亡したことが判明する。

 

彼らに輸血された血は、「ゴールデン・ブラッド」という
どんな血液型にも輸血できる奇跡の血液。

 

さらに、惠利の死とその奇跡の血液との関連も浮かび上がり、
圭吾は真相を追い求める。

 

この作品は、輸血用血液の慢性不足や、遅い新薬認可という
日本の医療体制の事情が背景にある。

 

そのうえで「多くの人の命を救えるなら、多少の犠牲には
目をつぶる」という考えと、「一人の命を犠牲にして万人を救う
正義などありえない」という考えがぶつかり合う。

 

立ち位置によって、どちらの側にも行ってしまえるほど、
難しい問題だ。

 

また、「重篤にはならない病気の根を含んだ血液を輸血し、
長く医療費を使わせる。それが、難病を根絶するための
研究に振り当てられる」なんていうことを、
どこかの上の人が本気で考えるとしたら、恐ろしい。

 

いろいろ、むずかし~いテーマもあるのだが、
圭吾を取り巻く町のあたたかな雰囲気が心をなごませてくれる。

 

向こう三軒両隣。
昭和の商店街のような暮らしが生き残っており、
ちょっと、鬱陶しそうだが、こんな町に住みたいと
思わせる。

 

人の悲しみを癒し、救うのは、やっぱり、
人とのつながりなんだと、あらためて思わせてくれる。

 

それと、「猟奇犯罪捜査斑」シリーズの東海林刑事の
登場は嬉しかったなぁ。

 

ここでも、相変わらずの飄々とした姿。

 

シリーズの間を、おなじみのキャラが行き来している
と、ニンマリしてしまう。

 

 

ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD (幻冬舎文庫)

ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD (幻冬舎文庫)