新婚夫婦が手斧で惨殺された。殺害された若妻の口には、結婚式場のパンフレットが押し込まれ…。前川裕さんの「酷 ハーシュ」を読む。
人の悪意や狂気の塊を描いた作品の多い作家さんなので、
どこに闇の落とし穴があるのだろうかと、
どうしても最初から身構えてしまった。
手斧による凄惨な連続殺人ではあるが、
普通の警察小説のように、前半は捜査の過程が
淡々と綴られる。
隣人の思いがけない狂気や、粘っこい悪意は
現れてこない。
だが、中盤(ま、このあたりから犯人の見当がつくのだが)から
一挙に狂気が押し寄せる。
この作家さんの得意とするところだ。
ただ、アイピローの問題とか、公衆電話からの着信問題とか、
伏線かと思う問題があいまいなままで、
登場人物の「すべてがはっきりすることなどはほとんどない」という
セリフで片付けられるのは…。
些細な謎なのかもしれないが、提示する謎は解明し、
伏線はすべて回収して欲しい。
新婚夫婦が手斧で惨殺される。
殺された新妻の口には、結婚式場のパンフレットが
突っ込まれ、猟奇的犯罪に仕上がっていた。
捜査に進展のないまま二年が過ぎ、
警視庁捜査一課刑事、手塚は、病欠の出た捜査本部に配属された…。