目の前で母を惨殺された七歳の少女は、復讐を誓った…。大山淳子さんの「赤い靴」を読む。
どう表現すればいいのだろうか。
この作家さんが描く世界は、心温かくなるものが多かったので、
今作の思いがけない作風は、ある意味、裏切られたという感じがする。
それは、いい意味でも、逆の意味でも。
ファンタジー、それも思いっきり黒いファンタジー。
山の中で育った少女、異形の男、歪んだ親子たち、
そして、鬼退治…。
復讐に生きる少女、新薬研究に全てを注ぐ櫂、そして
目的達成のため、人殺しも厭わない「黒い鬼」。
登場人物はみな、悪意や負の感情を隠さず、むき身のままで生きている。
皮をはがれた人間が、血を垂らしながら、生きている。
そんな、印象を受けた。
彼らのあからさまな生き方に、打ちのめされた。
七歳の時、目の前で母を惨殺された葵。
山へと逃げ込み、「櫂」と名乗る謎の男に助けられる。
そして、「鬼退治」をするため、心を閉じたまま、
訓練を積み、知識を蓄え、「櫂」が死んだ日に山を下りる。
葵は復讐を成し遂げられるのか。
多くの親子が登場するが、いずれも、どこかしら歪んでいる。
彼らが望んだものは、一体何なのか。
葵の閉ざされた心が開く日は来るのか…。