唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

吉永南央さんの「花ひいらぎの街角」を読む。

小蔵屋のお草さんと、周囲の人々との

温かかったり、ちょっと苦かったりする交流を描いた

「紅雲町シリーズ」も六作目。

 

流れるような文章が心地よい。

 

リズミカルでありながら、急ぎすぎない。

お草さんの足取りに合わせるような。

 

一話一話、一字一句、大切に読みたい。

 

人と人が交われば、日常の中で、

どうしても起こるすれ違いやいさかい、そして謎。

 

端から見れば小さいものかもしれないが、

当人にとっては、日々の生活を滞らせるもの。

 

このシリーズを読むと、

ああ、こうして解決すればいいのかと、

思わされる話もある。

 

日々の暮らしが積み重なり、それぞれの人生となっていく。

 

普通の人生とは言うけれど、

どこにも普通と言えるものはなく、でも、普通は普通。

 

普通って、いったい、何なのだろう。

 

戦後の若い時代を一緒に過ごした友人から小包が届く。

お草さんには、掛け軸の上巻が、

そして珈琲の師匠、パクサンには下巻が。

 

それをきっかけに、五十年ぶりに旧友三人が再会する

一話「花野」から、徐々に物語は広がっていく。

 

五十年、なんと長い時間、

でも、ほんの一瞬の間のようで…。

 

人が水面に投じた石は波紋を作る。

それをきれいだと思う人、不安あるいは不満を抱く人。

 

感じ方は人それぞれ。波紋を作った相手を恨む人も

いるかもしれない。

 

ワタシ自身、人生の中盤をとっくに過ぎ、

なんだか、今回の一冊は、特に心にしみた…。

 

 

花ひいらぎの街角 紅雲町珈琲屋こよみ

花ひいらぎの街角 紅雲町珈琲屋こよみ