路に落ちている「たすけて」と書かれたメモ、行方不明の女子中学生…、相変わらず、お草さんの周りは騒がしい…。吉永南央さんの「月夜の羊 紅雲町珈琲屋こよみ」を読む。
お草さんを知らない人々は、彼女を「お節介婆さん」だと思うのだろう。
だが、彼女のちょっとした「お節介」が、人を救い、
人と人との絆を強めもする。
そんなお草さんの物語、「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズも、
もう、九作目。
九年間、実家に引きこもり、
母親が倒れても、周囲に知らせもせず、
ただ、メモ帳に「助けて」と書き、外へ放った男、
家出か、誘拐かと、周囲を騒がせた女子中学生の聖、
時代錯誤の校則を掲げる校長、久美と母親との確執、
そして一ノ瀬との間に生じ始めるひずみ…。
相変わらず、お草さんの周りで、突然に発生、あるいはじわじわと
浮き上がってくる問題。
見守るか、あるいは、関わるか、
関わらない、を選んだとしても、その底には、彼女の優しさがある。
ワタシの傍から、続けて身内がいなくなった今、
お草さんの「いずれは、一人になる」という言葉が、重い。
人はどうしたって一人。
誰もかれも孤独で、それは歯を食いしばって耐えるしかない。
紅雲町で起こる問題は、それぞれ、とりあえず収まってはいくのだが、
聖の抱える問題は、決着をみなかったような…、
この続きは、次回待ちか…。