宮部みゆきさんの「昨日がなければ明日もない」を読む。
待ってました。
待望の杉村三郎シリーズの最新刊。
「絶対零度」「華燭」、そして表題になっている
「昨日がなければ明日もない」の3つが収められている。
どれも、心のどこかにゆがみを持つ女たちを描いている。
そのゆがみは毒を放ち、周囲の人を巻き込んで
傷つけていく。
その傷は浅くもあり、深くもあり、
子どもでも大人でも構わず、痛みを与える。
そして最終的には、自家中毒のように、
自らも破滅する。
妬み、そねみや嫉妬など、
負の感情を抱きかかえながら、
周囲に腐臭をまき散らしていく人々。
こうした人々の存在がミステリーのネタになるのだが、
杉村シリーズでは、どの作品でも、
こうした人の悪意が見事に描かれている。
こんな人が周りにいたとしたら、
何と恐ろしいことか…。
こうなると、ミステリーというより、
もう、ホラーだ。
そんな中にあって、杉村三郎は
淡々と、探偵の仕事をこなしていく。
悪意を目の当たりにしても、
取り乱すことなく、落ち着いている。
それはこれまで、彼が多くの悪意と対峙してきたからなのか、
それとも、何事も受け止めてしまう性格のせいなのか。
それはともかく、毎作、魅力にあふれる登場人物が現れるが、
今回、気になるのは、大家の夫人、竹中松子だ。
人間的な深みを感じさせながら、どこかしら、チャーミングだ。
誰かに似ているような気がするが、思いつかない。
彼女が絡んでくる作品を、もっと読みたい。