唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

三十年以上前の冤罪事件、二十三年前の夏の失踪、そして現在の少女失踪が結びついたとき…。太田愛さんの「幻夏」を読む。

 

幻夏 (角川文庫)

幻夏 (角川文庫)

  • 作者:太田 愛
  • 発売日: 2017/08/25
  • メディア: Kindle版
 

 

 

修司、鑓水、相馬に、また、どうしても会いたくなって。

 

事件の様相が二転、三転する様は、前作と同様。

次に何が来るかと思う分、楽しみが倍増する。

 

人生は、時として、他人の思惑で大きくねじ曲がる。

無辜の人がある日突然、身に覚えのない罪に問われ、

抗う気力を奪われ、人間性も、人生も滅茶苦茶にされる。

 

今回も、普通に生きている人が理不尽な目にあい、

その波紋が広がり、事件へと繋がっていく。

 

その波紋は、理不尽という渦に巻き込まれた者にとって、

あまりにも過酷で、踏みにじられた人々の無念さが伝わり、

胸が苦しくなってくる。

 

起きてしまった事件は取り返しがつかないが、

これから起ころうとしているまがまがしい出来事を、

修司、鑓水、相馬の三人が、体当たりで防ぎに行く。

 

前回の事件の後、鑓水は探偵事務所を開き、

仕事をなくした修司は、鑓水の助手となり、

相馬は、交通課に左遷させられた。

 

世田谷で発生した、少女失踪事件の捜査に応援で

駆り出された相馬は、失踪現場で奇妙な印を見つけるのだが、

それは、見覚えのあるものだった…。

 

二十三年前の夏、幼かった相馬は、ある兄弟と仲良くなる。

が、その夏の終わり、兄の方が失踪し、その現場に残された印と

同じものだったのだ。

 

少女失踪事件が、二十三年前の失踪に結びついていく…。

 

一人の男がやっていない事件の自白を強要され、有罪判決を受ける。

その自白は、捜査員が書いたシナリオだった。

 

鑓水らが動き回るに従い、冤罪事件の過酷さが浮き彫りになってくる。

 

司法の在り方が、法の精神とはまったく逆の方向に走りだすとき、

巻き込まれた人は、ただ、踏みつけられるだけという、

実に恐ろしい社会に生きている。

 

事件の闇に隠れた者たちに向かって、

修司、鑓水、相馬は反撃を始めるのだが、

その反撃は、しっかり相手に当たるのだろうか。

相手に、痛手を負わせるくらいの…。