五つの密室、名探偵不在は続き…。岸田るり子さんの「密室の鎮魂歌(レクイエム)」を読む。
不可解で、謎めいた事件が次々に起こる割に、文章は淡々としていて、
非日常の世界を覗き見しているような気がしない。
ともかく、密室のオンパレードだ。
密室の中で、一人が失踪、二人が殺害され、
一人が頭を殴られる。
五つの密室。お腹いっぱいという感じもするが。
密室殺人という、王道ミステリーのようではあるが、
名探偵不在のまま、物語は展開する。
中心となる若泉麻美が探偵役かと思いきや、
ただただ、事件の周辺をウロウロしている。
そして、物語の核は、友人同士の感情のもつれあいという、
割と、せまっ苦しい世界が描かれる。
その狭い世界で、芸術、感性、男女、嫉妬、妬み、
愛の欠如というものが、あちこちから顔を出す。
負の感情のごった煮に、少々息苦しくもある。
結局、謎は、登場人物の手記で明かされ、
スッキリとした味わいはない。だが、奇妙な満腹感はあった。
そして、骸骨と旗、なんだか、心に残る…。
若泉麻美を中心に物語は進む。彼女の高校、大学時代の仲間が、
一人失踪し、二人殺害される。
いずれの場合も、事件の起こった場所は密室だった。
傲慢な女流画家、自己中心的な女の友人、そして、
謎めいた女流画家の子どもたち。
麻美は事件に巻き込まれながら、友人との関係を見つめ直す。