「なんちゃって司書」という設定、次々に登場する本たち。本好きにはたまらないストーリー。竹内真さんの「図書室のキリギリス」を読む。
本屋さん、図書館、古書店…、
つまり、本が存在する場所が舞台になった物語は、
それだけで、興味をかきたてられる。
古書店なら「ビブリア古書堂の事件手帖」(三上延さん)、
本屋なら「成風堂書店事件メモ」(大崎梢さん)、
図書館で思いつくのが、「れんげ野原のまんなかで」(森谷明子さん)などが
心に残っている。
友人に勧められて、訳も分からないうちに、学校司書という
仕事についた詩織、バツイチになったばかりだ。
それは、裏に夫の失踪という不穏な事情があるのだが、
ミステリーファンとしては、どんな犯罪に巻き込まれたのだろうかと、
先読みをしようとするのだが、
高校の図書室という舞台が邪魔して、なかなか読めない。
加えてだ。詩織が、残留思念を読み取る力を持つという設定が、
何か起こりそうな予感を余計に強め、ミステリー感は高まる一方。
だが…。
夫の失踪にまつわる話も、結構、あっさりとしたもので、
本にまつわるミステリー要素も、なきにしもあらずなのだが、
読み終えてしまえば、本をめぐるストーリーであり、
読書の醍醐味と、生徒たちとの交流、そして、
学校司書としての成長が描かれたお仕事ストーリーだと思えた。
それはそれで、次から次へと登場する本を介して、
世界は広がり、新しい扉が開かれていく。
本好きには、たまらない作品である。
そして、生徒たちが本を通して、友人を作り、
学校生活を楽しむ姿が生き生きと描かれ、
爽やかな作品でもある。