唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

「なんちゃって司書」という設定、次々に登場する本たち。本好きにはたまらないストーリー。竹内真さんの「図書室のキリギリス」を読む。

 

図書室のキリギリス (双葉文庫)

図書室のキリギリス (双葉文庫)

  • 作者:竹内 真
  • 発売日: 2015/09/10
  • メディア: 文庫
 

 

 

本屋さん、図書館、古書店…、

つまり、本が存在する場所が舞台になった物語は、

それだけで、興味をかきたてられる。

 

古書店なら「ビブリア古書堂の事件手帖」(三上延さん)、

本屋なら「成風堂書店事件メモ」(大崎梢さん)、

図書館で思いつくのが、「れんげ野原のまんなかで」(森谷明子さん)などが

心に残っている。

 

友人に勧められて、訳も分からないうちに、学校司書という

仕事についた詩織、バツイチになったばかりだ。

 

それは、裏に夫の失踪という不穏な事情があるのだが、

ミステリーファンとしては、どんな犯罪に巻き込まれたのだろうかと、

先読みをしようとするのだが、

高校の図書室という舞台が邪魔して、なかなか読めない。

 

加えてだ。詩織が、残留思念を読み取る力を持つという設定が、

何か起こりそうな予感を余計に強め、ミステリー感は高まる一方。

 

だが…。

 

夫の失踪にまつわる話も、結構、あっさりとしたもので、

本にまつわるミステリー要素も、なきにしもあらずなのだが、

読み終えてしまえば、本をめぐるストーリーであり、

読書の醍醐味と、生徒たちとの交流、そして、

学校司書としての成長が描かれたお仕事ストーリーだと思えた。

 

それはそれで、次から次へと登場する本を介して、

世界は広がり、新しい扉が開かれていく。

本好きには、たまらない作品である。

 

そして、生徒たちが本を通して、友人を作り、

学校生活を楽しむ姿が生き生きと描かれ、

爽やかな作品でもある。