唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

三人の教授殺しと、近代国家となったばかりの日本の行く末がリンクする…?門井慶喜さんの「東京帝大叡古教授」を読む。

 

東京帝大叡古教授 (小学館文庫)

東京帝大叡古教授 (小学館文庫)

 

 

 

物語は、熊本の第五高等学校男子学生、「阿蘇藤太」の視点で

進んでいく。

 

藤太は政治家を志望し、東京帝大の教授、宇野辺叡古の元で、

一カ月だけ、書生見習いとして、「学のない政治学」、つまり、

生きた政治を勉強することになる。

 

この「阿蘇藤太」とは、叡古教授が勝手に彼に付けた名前。

 

叡古教授は、法律、政治のみならず、語学や文学、史学にも精通する

「知の巨人」と呼ばれる。

といっても、知識に溺れる天才学者バカではなく、

深い洞察力と、観察力を持ち、そして何より、人に対する慈愛にあふれている。

 

明治政府誕生から以後、激しく変転する社会で、

三つの殺人事件。その裏には、

近代国家という道を、よちよちと歩きだしたばかりの

日本のかじ取りをする政治家たちの思惑があった。

 

徳富蘇峰、西園寺公望、桂首相、原敬、夏目漱石などなど、

輝かしい歴史上の大物たちが登場人物として、

物語の上で、重要な役割を果たす。

 

叡古教授という人物の魅力が後を引いて…、

もう少し、読みたいのだが、どうやら、

続編はなさそうだ…。

 

そして、結末で明かされる、「阿蘇藤太」の正体とは…。

 

ミステリーとしてより、歴史小説の色が濃いかもしれない。

 

 

藤太が東京にやって来た日、教授と待ち合わせていた

大学の図書館で男性の遺体を発見してしまう。

 

その時点から、シャーロック・ホームズにあこがれていた藤太は、

叡古教授のワトソン役を務めることになった。

 

図書館で死んでいたのは、叡古教授の論敵、高梨教授だった。

叡古教授の活躍で、犯人は捕らえられるのだが、

続いて、同じく帝大教授の鳥居教授が毒殺されるが、

この事件では、夏目漱石が容疑者に。

 

さらに、学習院大学の

中倉教授が殺されていく…。

 

この連続した「教授殺し」では、それぞれ、犯人が逮捕されているが、

黒幕の存在も…。

一体、誰が、何の目的で、行っているのか…。