森谷明子さんの「花野に眠る 秋葉図書館の四季」を読む。
「れんげ野原のまんなかで」に続く秋庭市立図書館物語の2作目。
5つの短編で構成されているが、それぞれのストーリーはつながっている。
新人司書の今居文子を中心に、物語は進んでいく。
児童書がたっぷり紹介され、本好き、図書館好きにはたまらない。
土砂崩れで白骨死体が表出して…なんていう騒ぎもあるが、
殺伐としたものではない。
心に染み入るミステリーだ。
3人の職員が図書館の中で、日常に入り込んでくるふとした謎、
人の心が織りなす、謎とまでいえない行き違いや迷路を解き明かしていく。
最後の一編は、戦前、今でいう行動障害を抱えた一人の男が一人の女性を
純粋に愛した様が描かれている。
とても切なく、愛おしい物語である。