唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

大量の蛆と、今回の新顔は「小黒蚊」。川瀬七緒さんの「スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官」を読む。

 

スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官

スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官

 

 

 

事件はいつも通り、しっかり腐敗した死体と、

大量の蛆、というパンチのきいた場面から始まる。

 

特に、今作は、前にもまして強烈なパンチで、

死体の解剖とともに湧き出した「小黒蚊」なる虫に、

解剖に立ち会った全員が刺され、その痒みと痛みに

一カ月悩まされるという、おまけつきだ。

 

人気の「法医昆虫学捜査官」シリーズも、もう七作目。

 

クセは強いが、魅力的な登場人物ばかりであるところも、

いつも通り。

彼らのやり取りを読んでるだけで、たっぷり二冊分は

楽しませてもらっている。

 

今回、岩楯の相棒となる所轄刑事、深水のユニークさも、

なかなかのものだ。

これまでの相棒はことごとく、赤星に会った途端、

彼女の信奉者になってしまったが、

深水は、後半まで、赤星を怪しいものでも見るような

視線を向け、折り合いはよくない。

 

さらに、捜査分析センターの、赤星の同僚、波多野。

今回は、赤星の助手を務めると自ら宣言して、

なかなかの活躍を見せるのだが、

個性的である点は、赤星に引けを取らない。

 

そして、捜査関係者ばかりではない。

事件があった街の町内会長、電器量販店の店員、

赤星にケガさせた不登校の少年など。

 

どうしてこうも、興味深く、面白く、魅力にあふれる人物を

作り出せるのだろうか。

ほんの一部分だけの登場では、実に惜しい気がする。

 

今回も、現場には数種の虫が登場する。

大量の蛆により、被害者の死亡日時を推定するのはいつも通りだが、

「小黒蚊」のほか、「カバキコマチグモ」、「タバコシバンムシ」などなどが、

犯人の居る場所に、捜査員たちを導く。

 

ただ、今回は、ツバメの活躍が大きく、

虫たちの出番が、少なかったのは残念だったけど。

 

そして、結末ではいつも、赤星と岩楯の強い絆を再確認させてくれて、

胸があたたかく、いや、熱くなる。