森晶麿さんの「葬儀屋は弔わない」を読む。
実に面白い設定。
「葬儀屋」ではなく、「葬偽屋」。
自分の死後の反応を見たいという人のため、偽の葬儀を行う殺生歩武(せっしょうあゆむ)。
保険調査員だった高橋セレナは、仕事をしくじったり、家族のトラブルを抱えたり、
さらに追い打ちをかけるよう、恋人を事故でなくしてしまう。
セレナは絶望の中、歩道橋から飛び降りて死のうとする。
それを止めたのが歩武だった。
彼はセレナに「四カ月間、おまえの命、俺に預けてみろ」と声をかける。
セレナの葬偽屋としての日々が始まる。
5つの偽儀が描かれる作品。
死に向き合うことは生を見つめること。死を意識し生を語る。
一見、軽めのミステリーだが、テーマはなかなかに重い。
だが、重いばかりではなく、未来に光が感じられる結末だった。