中山七里さんの「秋山善吉工務店」を読む。
人の子であろうと、イタズラを見つけると大声で怒鳴りつける。
時には、ゲンコツをくらわす。
ワタシが生まれ育った昭和の時代の近所の頑固
ジイサンっていったら、大体、こんな感じだった。
だが、この主人公の善吉じいさんは、ただの
頑固者ではない。
人間が大きく、懐が深い。余計なことは言わず、じっと見守ってくれる。
帯の文章ではないが、「爺ちゃん、あんた一体何者なんだ」と、
つい聞きたくなる。
結末はすがすがしいが、状況には少々不満がある。
だが、この結末を導き出すにはやむを得ないのかもしれない。
みんなが一歩踏み出し、前へ向かっていくために。
ゲーム会社をやめ、家に引きこもっていた史親の部屋からの出火で
家と夫を失った景子は、息子の雅彦、太一を連れ、これまであまり交流のなかった
夫の実家に身を寄せる。
義父は大工の棟梁。昔気質の人間で、雅彦たちは爺ちゃんを「恐怖の大王」と呼んで、
怖がった。
だが、それぞれに問題やトラブルを抱える太一や雅彦、そして景子をやさしく
見守り、時には窮地を救ってくれたのが善吉爺ちゃんだった。