近藤史恵さんの「シャルロットの憂鬱」を読む。
もう、はるか昔の話。
高校生の頃、家にマルチーズの子犬がやってきた。
真っ黒な瞳で私たちをじっと見つめるそのしぐさに、
家族全員がメロメロだった。
だが、小さくて、生まれた時から弱かったその子犬は、
数年で死んでしまった。
家族全員号泣し、そして、その日以来、
家にペットが来ることはなかった。
私たちの「ペット」は、その子だけだった。
この作品の主人公(?)、シャルロットは、
ジャーマンシェパード、大型犬だ。
引退した警察犬で、初めて犬を飼うことになる
浩輔、真澄夫妻は、はじめはおっかなびっくり、
でも、いつのまにか、シャルロットは欠かすことのできない
家族の一員となっていく。
日常の不思議や謎に真澄、浩輔、シャルロットが関わり、
解き明かし、解決していく六編の連作モノ。
はるか昔ではあるが、
犬と触れ合った日々が思い出され、
時には、胸の底がじんわり温かくなったり、
シャルロットのしぐさと思い出の犬が重なったりして、
十分楽しませてもらった。
できるなら、また、シャルロットに会いたいものである。