多くの人に愛でられる桜ではなく、ひっそりと咲く桜。桜星としての矜持を最後まで貫いた男、亀尾。そして、植木礼三郎が登場。神家正成さんの「深山の桜」を読む。
この作家さんの初読みが、「桜と日章」だった。
これが、植木シリーズの三作目だったので、
そこから、前へ前へと。
植木という、オネエ言葉を操る男は、
硬いイメージの自衛隊とは対照的で、
イロモノ扱いなのかと、思ったのだが。
後の作品では、名探偵役の植木礼三郎は、
ここでは最後まで、主人公、亀尾のサポート役だった。
三作目から読んだワタシとしては、
始めから緊張、そして重い空気の中、物語が進むところ、
植木の登場で一挙に空気が変わった感じで、待ってました!
自衛隊員が直面する現実に、
そして、圧倒的な描写に、
語る言葉もない。
彼らは、どのように正気を保ち、
誇りを持ち続けているのだろう。
何かを語れるようなものではなく、
読み終わると、ただ、ただ、しんとした思いだけが、
心の底に沈んで落ち着く。
最後の場面は、あまりにも切ない。
だが、美しい。
「侍」の生きざま、死にざまを見たような気がした。