アイダサキさんの「サイメシスの迷宮 完璧な死体」を読む。
「偏屈で協調性がない。人の話を聞かない。上司の言うこともきかない。
自分の仕事以外は眼中にない。呆れるほど空気を読めない…」
もし、こんな人物が相棒だったり、上司だったり、部下だったり、
あるいは、自分の周りをウロウロしていたら…。
ただ、こういう人間は、心に硬い鎧を着せていて、
その中身は非常に柔らかく、もろいという筋書きに、大体なっている。
警視庁特捜斑犯罪分析斑に異動になった神尾文孝が
配属されたのは、こんな人物の下だった。
その人物が、すぐれたプロファイリング力を示す羽生允。
羽生は実は、過去に巻き込まれた事件によって、
心に大きな傷を負い、そのうえ、経験したことすべてを
忘れることができないという、超記憶症候群を発症しているのだという。
神尾は配属初日、猟奇的殺人事件に臨場する。
発見された死体は、銀色の繭のように、
ラップとしっかり包まれた、美しいものだった。
扱いずらい相棒に振り回されながらも、しっかり食らいつき、
信頼関係を築きあげる、その過程も読ませる。