忌まわしい記憶を封印したことが、二人を引き離す…。谷瑞恵さんの「異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景」を読む。
古典絵画に描かれた、花や動物といった小道具には、
それぞれ特別な意味が込められているのだという。
その意味を解いて、絵画全体に表現されている意図を
探り出す、それが図像学なのだそうだ。
意味の込められた絵画が、見た人の心を操り、
不可解な行動を起こさせたり、破滅に導いたりすることから、
その絵は「呪いの絵」と呼ばれる、というのは、
ミステリー的発想で、興味深い。
それは、サテオキ…。
主人公の此花千景と、西宮透磨との距離感が、
今回の作品では少し縮まったような気がして、
いささかホッとしている。
「異人館画廊」シリーズも三作目だが、
これまで、素直になれない二人で、
彼らの心模様にイラっとさせられもするし、
千景の過去の誘拐事件や、親との関係にまつわる物語も、
なかなか鮮明にならない。
この、千景と透磨の関係性が、このシリーズのテーマの一つに
なっているのだろうが、どうもそちらに関心を持っていかれ、
ミステリーとしての物語の印象が薄くなる。