唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

ゾンビ・ウィルスに立ち向かうのは、六十五歳の研究者。跳ねっかえり捜査官とともに走り回る…。内藤了さんの「メデューサの首 微生物研究室特任教授 坂口信」を読む。

 

メデューサの首 微生物研究室特任教授 坂口信 (幻冬舎文庫)

メデューサの首 微生物研究室特任教授 坂口信 (幻冬舎文庫)

  • 作者:内藤 了
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: 文庫
 

 

 

パンデミック小説は、

一行目を読みだしたが最後、そのまま一気に、

最終ページまで持っていかれてしまう。

 

ウィルスに関連したバイオテロや、

パンデミックを題材にしたものは、

巷に氾濫しているが、

何といっても、これほど魅力に溢れた登場人物が

次々に現れてくるのは、この作家さんならでは、だ。

 

例えば、門番の老人たち。

学生たちが、「傭兵のケルベロス」と例える、

三人の守衛、主役を食いそうなくらい個性的な研修生、チャラ、

そして、実に頼りになる相棒、警視庁捜査支援分析センターの

跳ねっかえり捜査官、海谷。

 

彼らは繋がりを持たないが、

一つのチームのようになって、主人公である坂口教授を

支えていくのだ。

 

特に、海谷。

クセは強いが、決してブレない信念にもとづいて

犯人の背中を追いかける。

その様が、とてつもなくカッコいい。

 

そういう人々が、誰かのため、人類のために

走り回るその姿に胸が熱くなる。

 

そして、研究者ではあるが、決して研究バカではない、

坂口教授の好人物ぶりが際立ち、

心を離さない。

 

特に、妻への想いが、心を温かくした。

 

どうでもいいことなんだが、

エピローグの中で、海谷が、ハブられ捜査官仲間と

やり取りを交わしている。

この仲間に、「猟奇犯罪捜査斑」シリーズの東海林刑事の

姿がダブってみえるのだが…。

 

そうそう、同じ主人公が何度も、バイオテロやパンデミックに

遭遇するなんてのは変だろうが、

坂口、海谷たちに、もう一度、会いたい…。

 

坂口は恩師、如月からアルバムを託される。

その中に挟まれたDVDには、如月が大学のウィルス保管庫に

一本のチューブをしまう姿が映っていた。

 

坂口は保管庫からチューブを見つけ、

動物実験を行うのだが、

あまりにも恐ろしい結果を目の当たりにする…。