大山誠一郎さんの「赤い博物館」を読む。
人とのコミュニケーションが苦手の<赤い博物館>館長と、本庁捜一を追い出された刑事が過去の捜査資料をもとに未解決事件を捜査。謎を解き明かし、真実をあぶりだす。でも、最大の謎は、館長、アナタです!
最初の出会いは、TVドラマ化されたものだった。
さらに続編を見て、原作に興味がわいた。
いわゆる安楽椅子探偵モノであります。
警視庁付属の「犯罪資料館」、赤レンガ造りの建物であることから、
「赤い博物館」と呼ばれている。
1956年に設立されて以来、都内で発生した事件の証拠品や
捜査資料を、事件発生から一定期間をおいて、
所轄から引き取って、すべて保管しているという設定。
調査・研究や捜査員の育成に用い、
今後の捜査に役立てる目的で設立されたものの、
ただの大型保管庫となっているらしい。
物語は、博物館館長である緋色冴子が資料を読んで
感じた疑問を、ある失態をおかし、本庁捜一から
異動させられた寺田聡が手足となって、
疑問の一つ一つを解明していくものだ。
作品は、15年前の製パン会社の社長殺害事件など、
5つの事件を描いている。
博物館に勤務し始めた寺田は、
未解決事件の捜査資料を読み、証拠品を見ただけで、
「再捜査する」と言い出した緋色に反感を覚える。
だが、「優秀な捜査員でありながら、失態を犯した人材を
探していた」と言われ、彼女の手足になることを
承知する。
犯人捜し、謎解きの妙を楽しむため、
登場人物のキャラに魅力を感じたり、
仲間との連係プレーにワクワクしたりという
作品ではない。
というより、緋色冴子のキャラは、そっけない物言い、
愛想の欠片もない態度、触れると冷たさを
感じさせそうな雰囲気を醸し出しているのだが、
これっぽっちも情がないというわけではなさそう。
一番の謎は、この緋色館長本人。キャリアでありながら、
8年も資料館で放っておかれているのか、
このキャラは生来のものなのか、
この先、解き明かされることがあればいいけど。