唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

誰が敵か、味方はいるのか、中国返還前の香港で「負け犬」たちが命をかけた戦いに挑む。長浦京さんの「アンダードッグス」を読む。

 

アンダードッグス (角川書店単行本)

アンダードッグス (角川書店単行本)

  • 作者:長浦 京
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: Kindle版
 

 

 

誰が敵で、誰が味方なのか。

瞬時でも油断すると、命を持っていかれる。

 

裏切りと、駆け引きと。

 

そんな状況が、スリル満点のヒリヒリする感覚を刺激し、

ページを繰る手が止まらない。

 

追いつ追われつの戦いは、

あの「リボルバー・リリー」を思い出す。

 

中国返還前の香港を舞台に、

ロシア、英国、アメリカ、中国、日本、各国の諜報員が

入り乱れる中、諜報員でもない、一介の元官僚が、

命の危険にさらされながら、「負け犬」からの脱却を目指す。

 

一九九七年、農水省の官僚であった古葉慶太は、

上から命ぜられるまま、裏金作りを続け、

しかし、それが発覚した後、家族を人質にとられ、

その尻ぬぐいをさせられた。

 

農水省を追われた古葉は、その後、

身を隠すように証券会社で働いているが、

「俺は敗北者だ」という思いをぬぐえずにいる。

 

そんな彼は、顧客の一人である香港在住のイタリアの大富豪から、

「中国返還前の香港の銀行から秘密裡に運び出される、

国家機密のフロッピーディスクと書類を強奪する」計画への参加を

強要される。

 

この計画には、古葉の他に、国籍も経歴もバラバラな、

そして、やはり、過去に傷のあるアンダードッグ(負け犬)たちが

チームのメンバーとして参加していた。

 

「国家機密」の本当の正体は…、

古葉を含む「負け犬」たちの運命は…。

 

古葉たちの命をかけた戦いがメインだが、

古葉の義娘が登場する、二十年後の、

もう一つの物語と、交互に語られる構成になっている。

 

この物語が、本編の流れを少々、邪魔する感じもするが、

結末に導くための一つの要素として機能しているのだろう。

 

最後まで失速しない、ハラハラ、ドキドキのエンタテインメントだった。