ぶきっちょな性格の智美が選んだのは、飼い主と暮らせなくなった老犬の最後を看取る仕事だった…、近藤史恵さんの「さいごの毛布」を読む。
人と、ぶきっちょな付き合い方しかできない主人公、智美の
再生の物語である。
と同時に、事情があって「犬生」の最後を、
飼い主と共に過ごすことができなくなった
老犬たちとの切ない物語。
ところどころで、智美の性格描写に
イライラすることもあったが、
考えてみれば、ワタシ自身も、ここまでではないが、
相手に心のうちを素直に明かすことができない、
智美側のタイプで、
親にさえ、「分かりずらい」と思われていることを感じていた。
だからこそ、共感できるところと、反発を感じてしまうところが
半々にやってくる。
就活もままならなかった智美は、「ブランケット」という
老犬を世話する施設での住み込みの仕事を友人から紹介される。
個性的なオーナー、麻耶子や唯一の従業員、碧との生活、
そして、慣れない犬の世話に、初めはとまどいながらも、
智美は「ここに居ていいんだ、ここに居たい」と
思い始める。
麻耶子の息子との問題、碧の不倫、老犬の死など、
驚きや喜び、悲しみもあるけれど、
いつしか、温かい毛布にくるまれているような思いになる。
そして、一度でも犬を飼ったことがあるのなら、
きっと、さまざまな思いに向き合うことになるのだろう。
登場人物や犬たちの、その後も見てみたい…。