唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

ぶきっちょな性格の智美が選んだのは、飼い主と暮らせなくなった老犬の最後を看取る仕事だった…、近藤史恵さんの「さいごの毛布」を読む。

 

さいごの毛布 (角川文庫)

さいごの毛布 (角川文庫)

  • 作者:近藤 史恵
  • 発売日: 2016/10/25
  • メディア: Kindle版
 

 

 

人と、ぶきっちょな付き合い方しかできない主人公、智美の

再生の物語である。

 

と同時に、事情があって「犬生」の最後を、

飼い主と共に過ごすことができなくなった

老犬たちとの切ない物語。

 

ところどころで、智美の性格描写に

イライラすることもあったが、

考えてみれば、ワタシ自身も、ここまでではないが、

相手に心のうちを素直に明かすことができない、

智美側のタイプで、

親にさえ、「分かりずらい」と思われていることを感じていた。

 

だからこそ、共感できるところと、反発を感じてしまうところが

半々にやってくる。

 

就活もままならなかった智美は、「ブランケット」という

老犬を世話する施設での住み込みの仕事を友人から紹介される。

 

個性的なオーナー、麻耶子や唯一の従業員、碧との生活、

そして、慣れない犬の世話に、初めはとまどいながらも、

智美は「ここに居ていいんだ、ここに居たい」と

思い始める。

 

麻耶子の息子との問題、碧の不倫、老犬の死など、

驚きや喜び、悲しみもあるけれど、

いつしか、温かい毛布にくるまれているような思いになる。

 

そして、一度でも犬を飼ったことがあるのなら、

きっと、さまざまな思いに向き合うことになるのだろう。

 

登場人物や犬たちの、その後も見てみたい…。