浅暮三文さんの「無敵犯 刑事課・亜坂誠 事件ファイル101」を読む。
また一つ、「当たり」の刑事モノに出会えた。
この作家さんとは、「セブン」でお初にお目にかかった。
その時は、あまりインパクトを感じることはなく、
どちらかというと、主人公のキャラも、ストーリー展開でも地味な印象だった。
それが、この作品では、一つ一つ調べ潰していく、
地に足がついた刑事本来の姿が丁寧に描かれ、
ド派手なキャラではないが、なぜか安心して読み進めていた。
さらに、「セブン」で如月と相棒を組んだ「ハシゲン」こと土橋刑事が
登場してきたときは、心の中でガッツポーズをしてしまった。
それほど、土橋のキャラは忘れがたく、心に残っていた。
如月と亜坂が土橋の愛弟子のようで、土橋の二人に対する
優しいまなざしを感じる。
これからも、土橋を中心に2つのシリーズがリンクして描かれていけば
いいなと、思うのだが。
学校からのウサギの盗難、ゴミ屋敷放火、下水道内の爆発。
K署の亜坂刑事は、その三つの事件に違和感を感じていた。
調べていくと、別々の小さな事件のある共通項にたどりつく。
そして、ついに四つ目の事件で、若い女性が殺されてしまうのだが、
あとに幼い娘が残される。その娘は無国籍児だった。
その子が言う「内緒の子ども」がせつなく、内緒の子どもは幻の子どもでもあり、
そこに確かに居て生きているのに、居ないこととして扱われる。
そういう事実が、悲しかった。