高級旅館「銀の鰊亭」で火事があり、焼け跡から四人の遺体が見つかった…。小路幸也さんの「<銀の鰊亭>の御挨拶」を読む。
解き明かされない謎がいっぱい残り、
続編ありきのストーリー展開で、
どうも、釈然としなかった。
人の繋がりや、温かさは、この作家さんの作品全般の
テーマのようなもの。
ホンワカミステリーは世間にいっぱいあるから、
作品の雰囲気として別に間違っちゃいないんだが。
だが…。
記憶喪失や、過去の秘密や、放火殺人や、盗聴器が仕掛けられたり、
サラっと読むには、結構ディープな謎もあるのだが、
<闇>を感じさせられるような悪意らしい悪意も見つからず、
登場人物が善人のオンパレードで、
なんか、チグハグ。
主人公(らしき)光の、
裏表のない、まっすぐな性格も、
「正義の刑事」といっていいほど、まっとうな磯貝も、
言動がさわやかな宮島も、
誰もがあまりにも魅力的過ぎて、かえってうさんくさい。
それに、ツッコミを入れたくなるような場面もある。
光が「医療過誤」という言葉を出すと、
相手が「よく知ってますね。医療過誤なんて難しい言葉を」と返すのは、
どうだろう。
光って大学生なのに。
そして、タイトルに「御挨拶」とあるからには、
特別な意味がありそうだと考えてしまったが、
それらしき「御挨拶」は示されていなかったような。
やっぱり、ミステリーというより、青春小説だろうな。
なんて、いろいろつっこんでしまったが、
続編が出たとしたら、やっぱり買ってしまうんだろう。