唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

女であること、男社会で生きること、母親であること…、突っ張る女性警部とLGBTの部下、異色コンビ誕生か。吉川英梨さんの「新宿特別区警察署 Lの捜査官」を読む。

 

新宿特別区警察署 Lの捜査官 (角川書店単行本)

新宿特別区警察署 Lの捜査官 (角川書店単行本)

  • 作者:吉川 英梨
  • 発売日: 2020/11/27
  • メディア: Kindle版
 

 

 

キーワードは「LGBT、そして母親」。

 

新宿の歌舞伎町、二丁目を中心とした一画を管轄する、

新宿特別区警察署。その女性幹部として奮闘する新井琴音警部が主人公。

 

管轄地域が持つ特異性によって、

事件の核には、LGBTやインターセックスという難題があり、

さらには、警察というゴリゴリの男社会で、

女性として、母親として、とにかく突っ張って、突っ張って、

突っ張りまくる琴音。

 

そして、母親との確執。

母親からの支配を受けてきた二人の犯人と、琴音。

 

まあ、さまざまなテーマがてんこ盛りだ。

 

だからといって、複雑化し、訳が分からなくなっているということではない。

 

「男と女の間には 深くて暗い川がある」(黒の舟唄)という唄を

突然、思い出した。

(女であること、男であることを、痛烈に意識させられる作品、

だからかもしれない)

 

いやぁ、現代は、男とか、女とか、じゃなくて、

人と人の間には…、だろう。

 

人と人の間には、川どころか、分かり合えない、

大海原があるのだ。

 

分かり合えないからと言って、何もしないくていいことはなく、

何かせざるをえない。

 

「黒の舟唄」だって、「誰も渡れぬ川なれど

エンヤコラ 今夜も舟を出す」って歌っている。

 

向こう岸にたどり着かないかもしれないが、

それでも、渡ろうとするのだ、人間って…。

 

仕事や家庭のことで、葛藤して、葛藤して、

必死すぎる琴音の姿は、重く、切ないけど、

レスビアンをカミングアウトしている部下の六花や、

強面の木島といった、仲間たちの魅力が半端なく、

続編が出れば、いいなぁと思っている。

 

歌舞伎町のホテルで、スーツケースからはみ出た

女性の全裸死体が発見された。

同宿した女性の息子が行方不明だという。

 

さらに、二丁目のショーパブで、

無差別殺傷事件が発生した。

犯人はその場で自殺したのだが、

その身元に繋がるものはなく、解剖の結果、

男性でも女性でもない、つまりインターセックスであることが判明した…。