「日本をバーションアップする」が口癖の、変人官僚、吉良がコロナ感染に挑む。真行寺も登場します。榎本憲男さんの「DASPA 吉良大介 コールドウォー」を読む。
このシリーズは、「巡査長」シリーズの表であり、裏である。
「日本をバージョンアップする」が口癖の官僚、吉良と、
あくまで、自由を求め続ける、巡査長、真行寺との、
個人と国家の対立(のようなもの)が核となる。
国家を背負った吉良と、真行寺との立場の違いが、
物語を面白くしている(特にこの作品は)。
コロナ禍の、大規模ライブ開催における主催者の感染死に、
事件の匂いを嗅ぎ、真相を追い求めた真行寺の物語は、
「巡査長 インフォデミック」で楽しめ、
同じ状況下で、吉良の視点で描かれたのがこの作品。
コロナ感染を利用した世界の覇権争いとか、米中の争いに巻き込まれる
日本の行く末とか、情報やテクノロジを操るコロナ感染の封じ込めとか、
興味深い要素が満載である。
感染拡大の中でも、経済を回そうという吉良が、個人の自由にこだわる
真行寺に対して突き付ける、
「国民は自由よりももっと切実に欲しいものがある…
快適でゆとりのある安定した暮らしを一番欲しがっている。
国の管理を受けたとしても」という本音。
う~ん、一理ある。
自由というものは魅力的ではあるが、怖いものだから。