唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

「日本をバーションアップする」が口癖の、変人官僚、吉良がコロナ感染に挑む。真行寺も登場します。榎本憲男さんの「DASPA 吉良大介 コールドウォー」を読む。

 

コールドウォー DASPA 吉良大介 (小学館文庫 え 8-4)

コールドウォー DASPA 吉良大介 (小学館文庫 え 8-4)

  • 作者:榎本 憲男
  • 発売日: 2021/01/04
  • メディア: 文庫
 

 

 

このシリーズは、「巡査長」シリーズの表であり、裏である。

「日本をバージョンアップする」が口癖の官僚、吉良と、

あくまで、自由を求め続ける、巡査長、真行寺との、

個人と国家の対立(のようなもの)が核となる。

国家を背負った吉良と、真行寺との立場の違いが、

物語を面白くしている(特にこの作品は)。

 

コロナ禍の、大規模ライブ開催における主催者の感染死に、

事件の匂いを嗅ぎ、真相を追い求めた真行寺の物語は、

「巡査長 インフォデミック」で楽しめ、

同じ状況下で、吉良の視点で描かれたのがこの作品。

 

コロナ感染を利用した世界の覇権争いとか、米中の争いに巻き込まれる

日本の行く末とか、情報やテクノロジを操るコロナ感染の封じ込めとか、

興味深い要素が満載である。

 

感染拡大の中でも、経済を回そうという吉良が、個人の自由にこだわる

真行寺に対して突き付ける、

「国民は自由よりももっと切実に欲しいものがある…

快適でゆとりのある安定した暮らしを一番欲しがっている。

国の管理を受けたとしても」という本音。

 

う~ん、一理ある。

 

自由というものは魅力的ではあるが、怖いものだから。