相変わらず、異端だわぁ~、榎本憲男さんの「巡査長 真行寺弘道 エージェント」を読む。
「巡査長 真行寺弘道」シリーズの四作目。
異端の刑事の捜査は、やはり異端である。
何らかの情報を掴むと、それをきっかけに想像を次々に膨らませ、
「そう考えると面白い」と言いながら、真相に迫っていく。
彼の頭の中だけで完結していくもので、
警察常道の、「ニコイチ」にのっとって動くなら、
組まされた相手はかなわないだろうなぁ。
どの作品もテーマは大きく、時として迷子になりそうなのだが、
文体の力強さで、ぐいぐい引っ張られていく。
今回も、政権、選挙、AIペットロボット、仮想通貨、
個人情報収集、さらには中国スパイまで出てきて、
大盤振る舞いである。
政治や経済の、真行寺なりのとらえ方、理解の仕方が
興味深い。
それは何といっても、この異端の刑事の
溢れんばかりの魅力からくるものだ。
お尋ね者のハッカーと手を組んだ違法捜査も辞さない、
ということもそうだが、
巡査長に甘んじ、というより、自らその立場を選び、
何ものにも縛られない、自由人であるということ。
それは、警察組織にあっては、奇跡のような存在だ。
そして、彼の相棒となるハッカーの「黒木」との絆、
居候の森園やサランとの関係性も、なんか、熱いものがある。
たまには、王道の殺人事件かなんかを扱ってみて欲しいが、
自由人の巡査長が相手する悪は、やっぱり巨悪なほうがいいのかもしれない。
ま、今回の相手が巨悪だったかどうかは…。