唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

相変わらず、異端だわぁ~、榎本憲男さんの「巡査長 真行寺弘道 エージェント」を読む。

  

エージェント-巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

エージェント-巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

  • 作者:榎本 憲男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/11/21
  • メディア: 文庫
 

 

 

「巡査長 真行寺弘道」シリーズの四作目。

 

異端の刑事の捜査は、やはり異端である。

何らかの情報を掴むと、それをきっかけに想像を次々に膨らませ、

「そう考えると面白い」と言いながら、真相に迫っていく。

 

彼の頭の中だけで完結していくもので、

警察常道の、「ニコイチ」にのっとって動くなら、

組まされた相手はかなわないだろうなぁ。

 

どの作品もテーマは大きく、時として迷子になりそうなのだが、

文体の力強さで、ぐいぐい引っ張られていく。

 

今回も、政権、選挙、AIペットロボット、仮想通貨、

個人情報収集、さらには中国スパイまで出てきて、

大盤振る舞いである。

 

政治や経済の、真行寺なりのとらえ方、理解の仕方が

興味深い。

 

それは何といっても、この異端の刑事の

溢れんばかりの魅力からくるものだ。

 

お尋ね者のハッカーと手を組んだ違法捜査も辞さない、

ということもそうだが、

巡査長に甘んじ、というより、自らその立場を選び、

何ものにも縛られない、自由人であるということ。

それは、警察組織にあっては、奇跡のような存在だ。

 

そして、彼の相棒となるハッカーの「黒木」との絆、

居候の森園やサランとの関係性も、なんか、熱いものがある。

 

たまには、王道の殺人事件かなんかを扱ってみて欲しいが、

自由人の巡査長が相手する悪は、やっぱり巨悪なほうがいいのかもしれない。

ま、今回の相手が巨悪だったかどうかは…。