唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

「困っている人には何かしてあげないと」、小五の咲陽は、「父親が家に帰ってこない」と言う同級生の小夜子を家にかくまうのだが…。天祢涼さんの「陽だまりに至る病」を読む。

 

 

前二作ほどの切なさは、感じなかった。

それは、この作品に登場する、小五の二人の女の子、

咲陽と小夜子が、なかなかのたくましさを備えているからだろうと思うのだ。

彼女らは、大人ではないが、子どもでもない。

 

小夜子のたくましさは、生い立ちのせいもあるだろうが、

咲陽は、真実に傷を負いながらも、

打ちのめされて終わり、というわけではない。

 

小夜子の心を思いやる、それこそ、大人顔負けの

洞察力を持っている。

 

咲陽が事件に関わっていく導入部分には、

とまどいというか、違和感を覚えてはいた。

ま、大人顔負けの思考と、行動力を持っているという

キャラ設定だろうからと、納得はしたが。

 

とまどいと違和感は、真壁視点の章に入り、解消され、

落ち着いた。事件の話は、大人の、刑事の目線がしっくりくる。

 

今回、仲田がこれまでのような関わり方をせず、

出番が少なかったのは。

 

「すべての子どもを助けるのは現実的ではない。信じられる

子どものことは信じて、あとは任せるしかないんです」という

信念に基づいた結果なのだろうが、

少々、物足りなかった。

 

仲田については。

 

真壁の、「なにが君をここまで子どものために駆り立てるんだ」という

つぶやき。

そう、私たちも同じように、仲田のことを、もっと知りたい…。

 

 

 

 

 

 

 

マンホールに押し込まれた死体、街灯に吊り下げられた死体…、被害者は、すべて警察関係者だった。六本木の街に、何が起こっているのか。銀ジロウさんの「Darkness」を読む。

 

Darkness

Darkness

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六本木警察署管内で発生した殺人事件の被害者は、

刑事だった。

遺体の口には、コカインが入ったビニール袋が

押し込まれていた。

 

その後、次々に警察関係者の死体が見つかり、

その口からは、必ず何かを暗示するものが見つかる。

 

警官が狙われるわけは…、

怨みか、報復か。

 

六本木警察署の、園山を始めとする刑事たちが、

一斉に、捜査を開始する。

 

シーンは、目まぐるしく変わり、

管内で発生する事件が次々に描かれていくこともそうだが、

芝居がかった情景描写で、

このまま、TVの刑事ドラマに使えそうだ。

 

ただ、そうした事件が、警察官が狙われる事件の伏線かと

思いきや、そうでもなさそうなところが…。

 

中盤頃から、犯人の見当がつくのだが、

このままで済まない、きっと、大ドンデン返しがあるはずだ、

そう、思っていたのだが…。

 

刑事たちのキャラは、せっかく面白く作られているのに…。

 

 

 

新しいヒーローは、科学捜査鑑定人、氏家。古巣の科捜研を相手に、真実を追求する。中山七里さんの「鑑定人 氏家京太郎」を読む。

 

 

シリーズものが多い作家さんの作品を読んだとき、

別作品の登場人物が、顔を見せてくれた時は、

嬉しくてたまらない気持ちになる。

 

この作品の場合、「ヒポクラテス」シリーズの光崎や、

千葉県警の高頭警部が、同じ舞台に上がってくれた。

 

元科捜研の氏家が、民間の鑑定センターを設立し、

刑事事件に関する鑑定に関わっていくという物語で、

これも、シリーズ化、ありか?

 

近頃、警察や、その関連機関内部の対立、人の悪意といったものが、

よく取り上げられるが、

真相に関わる場合仕方ないが、

ドロドロ感情で、主人公などが疲弊するのを見るのは、

スッキリしない。

 

この作品でも、ヤメ検弁護士の吉田と、検察官・谷端と、

氏家と科捜研の黒木、この二組の因縁が、事件の真相に大きく関わる。

 

氏家の仲間を大切にする思いや、

仕事をまっとうしようとする念の強さとか、

それが、光となって、黒いドロドロ感情から救ってくれる、気がする。

 

 

 

 

冷静な薬剤師、毒島さんと、ホテルマン、爽太との仲は…。今回は、漢方医学の話が盛りだくさん。塔山郁さんの「病は気から、死は薬から・薬剤師毒島花織の名推理」を読む。

 

 

毒島さんシリーズも四作目。

 

この前、TVドラマの中で、クリプトコッカス症が登場した。

これ、このシリーズで、知識として仕入れていたから、

鳩のいる公園が出てきたシーンで、すぐ思いついた。

 

自慢にも何にもならないが。

 

相変わらず冷静な毒島さんと、

なかなか、その仲が進展しない爽太。

今回は、ライバル出現かと、思わせられたけど。

 

今回は、医薬品ネタより、サプリメントや生薬に関する情報が

多かったが、それなりに面白かった。

ただ、漢方医学の話が多かったためか、

毒島さんの活躍の場が少なかったようで、それは残念。

 

ともかく、このシリーズ、安定している。

人が隠す、心の奥底をどうしても、暴かざるを得ない。これは、癖なのか、性なのか。とんでもない探偵、みどりの、あくまでも苦い五つの物語。逸木裕さんの「五つの季節に探偵は」を読む。

 

 

装丁のホンワカとした雰囲気にだまされた。

悪い意味での裏切りでは、ない。

 

高校生から社会人へ。探偵の素質を持ったみどりが、

本当に探偵になって、仕事をこなしていく過程、

これは、決して甘いミステリーでも、成長物語でもない。

大人の、苦味満載のストーリーである。

 

みどりは、とんでもない探偵だった。

 

真実の知りたがり、人が隠し持っているものを覗きたいという欲求、

こんな癖、あるいは性。

 

人に疎まれても、人の内面を見たいという欲求、いや、欲望は、

みどりの業を見せられているようで、

いささかだが、途中から、ゾクゾクとした怖ろしさを感じた。

 

「向こう側」へ行ってしまいそうな人間なのに、

こちら側に踏みとどまっていられるのは…。

 

怖ろしさを感じながらも、

みどりが、この先、どこまで行ってしまうのか、

見続けていきたい気がする。

 

五編目、「ゴーストの雫」で、みどりは、会社の課長になっており、

おまけに、出産をしたらしいと、知らされるのだが、

その経緯については、まったく触れられていない。

それって、とっても、気になる…。

 

 

 

型破りだが凄腕、大胆かつ緻密、特許侵害問題に立ち向かう女性弁理士、ニュー・ヒロイン登場。南原詠さんの「特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来」を読む。

 

 

弁理士という職業も、そして、特許というものに関しても、

全くと言っていいほど、知識がない。

それに、Vチューバ―に関しても。

 

仕掛けた罠にしたって、

知識があれば、もっと、楽しめたのかもしれない。

 

主人公は、女性弁理士の大鳳未来。

型破りで、際立ったキャラの持ち主。

 

ぐいぐい押していくタイプだから、

何があっても、きっと、

収まる所へ、収めてくれるものと。

 

そんな安心感がありつつ、ヒリヒリ感も

持たせてもらえる。

 

クライアントが抱えるVチューバ―に、

振り回されながらも、引き寄せてしまうのも、

大鳳の魅力の一つか。

 

「あなたの才能は私が守る」、

なんて、断言されたひにゃ、

お願いしますだぁ~、と、ひれ伏してしまいそうだ。

 

続編が出るまでに(きっと出ると思うが)、

少しは、特許の勉強でもしておこうか。

 

 

 

 

刑事たちの地道な捜査が始まる。女子大生の殺人事件が冤罪事件へ、そして少女たちの闇が…。穂高和季さんの「警視庁殺人犯捜査第五係 少女たちの戒律」を読む。

 

 

正統派の刑事の物語といった感じ。

 

警視庁殺人犯捜査第五係の辻岡警部補を中心として、

ストーリーは展開する。

 

「筋読みの天才」でもなく、強運の持ち主でもなさそうで、

コツコツ取り組み、取り組んだ分だけ、素直に、

物語は進んでいったような。

 

大ドンデン返し、というほどではなかったが、

そう来たか、と、いい意味での、裏切りで、

心がざわついた。

 

仲間とのやり取りは円滑で、

他県の県警とのもめごとはあるが、

仲間内での変な軋轢が無いだけ、いらいらしない。

 

女子大生殺人事件が、六年前の岐阜県の

冤罪事件に繋がり、その発端となった

女子中学生殺人事件に関係した少女たちの闇が浮かび上がる。

そして、新たな真相が見えてくる。