東野圭吾さんの「祈りの幕が下りる時」を読む。
加賀恭一郎が日本橋に移ったのも、わけがあった。加賀が中学にあがる前、突然に姿を消した母親の謎がついに解き明かされる。作品全体から「切ない」が垣間見え、読み終わってから「ほう」とため息をついてしまった。
この作家さんの作品は、単発ものからシリーズものまで読んでいるが、
ホントに幅広く、いくつもの引き出しを持っているんだなと感じ入る。
特に、加賀恭一郎シリーズは大好きで、TVドラマで阿部寛さんが
加賀役を演じる前からの愛読書だったが、どうも昨今は、加賀モノを読むと
あの濃い顔が紙面を走り回るようになった。
ソレハサテオキ。
「新参者」「麒麟の翼」に続き、
警視庁捜査一課から日本橋署に異動してからの
事件を描いた、日本橋3部作ともいわれる、日本橋を舞台にした
最後の作品がこの「祈りの幕が下りる時」。
コツコツと事実を一つずつ積み重ね真実にたどり着く刑事たち。
彼らに混じって加賀の推理が冴える。
なぜ人は殺されなければならなかったのか。
なぜ加賀の母は、加賀を置いて家を出なければならなかったのか。
事件の底を流れる人の思いが切なくて、時折、ページをくる
手を休め、大きく息を吐いてしまう。
加賀は警視庁に戻るということ、その活躍、待ちきれない。