大沢在昌さんの「魔女の笑窪」を読む。
この作家さんの、タフな女刑事を主役に据えた作品は多く、
また、タフなだけでなく、そのキャラや言動が魅力的だ。
彼女らは奔放で型やぶりだが、芯がある。
そして、この作品の主役。
女刑事が表なら、こちらは裏の社会でコンサルタント業を営む女性、水原。
裏で生きるからには、非合法な商売に手を染めることも、
暴力団と手を組むことも、時には殺人を画策することもある。
彼女の武器は、相手を見抜く力。
その能力は、凄惨な過去が彼女に与えたもの。
「地獄島」と呼ばれる、売春産業で栄えた島で、
夜通し男たちの相手をさせられ、
それが一生続く。
島から抜け出そうとするものは、島の番人につかまり、
牢獄に閉じ込められるか、殺される。
そんな地獄から唯一逃げおおせたのが、水原だ。
消したい、忘れ去りたい過去だが、
いつもその過去におびえている。
地獄から生還し、闇の社会でのし上がった彼女だから、
ハンパないタフさを持ち合わせているだろうと思う。
だが、無理やり過去に戻されそうになる場面では、
泣き、わめき、助けを乞う。
彼女はスーパーヒロインではなく、
哀しい女なのだと気づかされる。
過去と対決する覚悟を決めた彼女は…。
売春産業で成り立っていた島というのは、
実際にあるらしい。
「売春婦が島から泳いで逃げようとした」という話も、
事実としてあるとか…。