組織からはみ出した刑事、何森が、弱者が関わる事件を、一人黙々と追いかける。丸山正樹さんの「刑事何森 孤高の相貌」を読む。
先日まで読んでいた「感染捜査」が動であるとしたら、
こちらは、静。
良くも悪くも、クセの強い刑事が、
何かに引っ張られるように、捜査を進める。
「デフ・ヴォイス」シリーズの脇役だった刑事、何森が、
主役となって登場した。
「孤高」と言っても、私立探偵じゃないんだから、
組織の中で、どう、動いていくんだろうかと…。
疎んじられ、そっぽを向かれ、
見事なまでに、署の中に味方はいない。
こんな状況は、切ない。
そんな中で、一人動いて
(そう言ったって、刑事が一人で動けはしないだろう)、
事件を解決するとしたら、それは、ないだろう、と思ったが、
いました!味方が。
味方ではないのだろうし、積極的に支援するわけでもないのだが、
何森の能力を認めていそうな、間宮と、
そして、荒井みゆき。こちらは、完全に味方と言っていいだろうね。
彼らの存在があって、読者として、何だか、ホッとした。
三編目の「ロスト」で、何森が、荒井家の人々に、
過去の心の傷を打ち明けることができたという流れに、
胸が熱くなった。