少女おりんと「お化けさん」たちとの温かい交流、「悪意」に立ち向かう勇気に、心がほろほろ…と。宮部みゆきさんの「あかんべえ」を読む。
何か、とてつもなく悲しいことが起こったとき、
そこからの逃げ場となるのが、ワタシの場合、小説。
例えば、池波正太郎さん、藤沢周平さん、そして、
宮部みゆきさんの時代小説は特に、駆け込み寺となっている。
名もなき、貧しき、市井の人々が、
何らかの力に踏みにじられながらも、
それでも、自然に、まっとうに、一日一日を送ることが、
何よりも大切であるということ、
作り物でありながら、まだまだ人は、
捨てたもんじゃないと思わせてくれるもの。
心の、痛く固まったところが、
徐々にやわらかく、温かくほぐれていく様が実感できる。
この作品は、もう、十年くらい前に読んだものだが、
先に挙げた作家さんの作品は、一生の中で、
何度でも繰り返し、読む、読みたいと思うものだ。
主人公の少女、おりんが、父母が営む「ふね屋」で
出会う「お化けさん」たちと、温かい交流を広げていく物語だが、
「お化けさん」が「お化けさん」になってしまった過去の因縁には、
人の悪意、怨念、執念が絡みついており、
小さなおりんが、「お化けさん」たちに心を寄せながら、
悪意や怨念に立ち向かっていく。
少女の、誰をも思いやる、まっすぐで、まっとうな心根が
ワタシたち読者の心にストレートに刺さってくる。
相変わらず、この作家さんが描く、少女のキャラは、
あまりにも魅力的だなぁ。